the Caduceus of Hermes

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Entschluss


運命の歯車、という物が存在するならば、
それが狂い始めたのは、間違いなく、あの日だろう。




握り潰された、一通の招待状。
赤く染まった蛇の紋章を見るたび、焦燥感ばかりが募る。

煮詰まった思考をどうにかしようと、窓の外に目を向ける。
灰色の空の下に広がる庭は、全ての生気を失ったかのようだ。




春の終わりには、イヴが見事に咲き誇るはずの庭。




やわらかな風に揺れる、シャンパンゴールドの花。
優しい香りに包まれたテラスで、父上と母上が紅茶を飲んでいて。
芝の上では、ウォーレンとロイドが、懲りずにブルーノへ挑んでいる。
それを少し心配そうに見つめる、リーネとエリーゼ。




遠い昔の、幸せな記憶


何よりも、大切な人々


確かに、私の傍にあったはずなのに




金の庭が、寒空の下に色褪せた、あの日。
テラスにいたのは、横たわったリーネ。
言葉に出来ない程の喪失感に支配された、あの日。
父上も、母上も、エリーゼも……私も。





あの日―あの女の手で、歯車は止まった。

あの日―悲痛な叫びを上げ、歯車は壊れた。

あの日―彼の言葉で、歪んだ歯車は再び動き出した。






そして、今、再び―






『この度、ロンズデール子爵は
シャルロッテ殿と正式に御婚約されました』



彼の微笑みからは、威圧感すら感じられて、



『全て、計画通りでございます』



その裏で蠢く謀略を、疑わずにはいられない。





…そんな話、私は聞いていない。
何故、あの女と子爵が、婚約など……
私の知らない場所で、何が起きようとしているのか。
彼は……あいつは、一体、何を――



思考を再び、握り潰した手紙へと戻す。
決心をして、ひとつ、息を吐く。





「―――レオン、……レオン!」


「……はいはい。お呼びですかぁ?クラウス殿」


「すぐに出かける準備を。……装備を怠るな。」


「えぇ?出かけるんですか?
……うーん、今、実験中で、目を離したくないんですよねぇ。
できれば、ロイドあたりを連れて行っていただけたらなぁ、なんて」





「――ザ・カドゥケウス・オブ・ヘルメス。
……ロンズデール伯爵家へ」





「……なぁんだ。そういうことなら。
――喜んで、お供しますよ。」







私の手で、歯車を壊すことになってはならない。





私の手から、もう何も失う訳にはいかない。







確かめなくては










彼の真意を
ゲスト クラウス 18:30 comments(0)
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